お問い合わせは 📞 03-3478-0248

ヒト幹細胞培養液を用いて化粧品を製造する際に、使用される原料について、他の化粧品原料にはない考慮すべきポイントがいくつかあります。ここではそれについて解説します。

ヒト幹細胞培養液の表示名称はいくつかありますが、その表示名称を名乗るための定義の多くは、「培地中でヒト幹細胞を数日間培養し、その後に幹細胞を取り出したもの」という文章になっています。そのため、同一の表示名称であっても、内容成分が全く違うヒト幹細胞培養液が原料として市場に供給されています。

ヒト幹細胞培養液で化粧品を製造する際に、使用される原料について説明いたします。

化粧品原料専用の培養施設でつくられていること

化粧品を作る際に守られなければならないルールの一つに、医薬品を含んでいないことが挙げられます。再生医療等で幹細胞を培養する際には、細胞を増殖させるためのホルモン剤や細菌感染を防ぐために抗生物質などの医薬品を培地に添加することが一般的です。

日本のCPCの技術は高度な物ですが、それは再生医療における細胞培養技術で、化粧品原料を製造するための培養技術は全く別のノウハウが必要になります。

そのため私たちはヒト幹細胞培養液の化粧品原料を製造するにあたり、化粧品原料専門の培養施設で製造することにこだわっています。

由来となる幹細胞について

弊社のヒト幹細胞培養液の製造は全て脂肪由来幹細胞を用いています。近年では他の由来のヒト幹細胞培養液の化粧品原料も見受けられるようになりましたが、幹細胞の入手にはいくつかの困難が伴います。

幹細胞の提供をいただく方(ドナー)には、対価としてお金を払うことが禁じられています。ドナーから幹細胞を採取するためには、ドナーの身体を傷付ける必要があるので、対価無しに細胞の提供を受けることは大変に難しいことです。その点、美容医療において採取される脂肪組織の提供を受けることは、ドナーの承諾を得やすい上、良質の幹細胞を適切に入手できるというメリットがあります。

他の由来の幹細胞でも、ドナーを傷つけずに入手できる細胞はありますが、入手できる量が少なかったり、造血細胞移植法など法令に抵触したりする場合があります。

実験用の細胞であれば、細胞販売業者から購入することも可能ですが、そのような細胞を商業利用することは多くの場合禁止されています。

幹細胞を商業利用する場合はドナーの承諾書が必要になります。

化粧品原料の製造に幹細胞を使用する際には、脂肪由来幹細胞が弊社にとって最も合理的な選択であり、世界の論文数も美容に関しては脂肪由来幹細胞のものが最も多いので、化粧品原料の製造には、脂肪由来幹細胞を使用しています。

ウイルスについて

他の化粧品原料と違いヒト幹細胞培養液だからこそ配慮しなければならない点はいくつかありますが、ウイルスの制御はその一つです。ウイルスは細菌や真菌と違い、ウイルスのみで増殖することはできません。ウイルスは宿主の細胞を使って増殖するという特徴があります。そのため、製造に細胞を使用しない通常の化粧品原料と違い、ヒト幹細胞培養液はウイルス制御が非常に重要になります。 ドナーがウイルス感染していないことはもちろんですが、樹立した細胞株でもウイルスの存在を否定し、さらに弊社の場合は製造ロットごとのウイルス否定試験を行っています。そしてその結果はヒト幹細胞を使用するすべての原料のCOA(試験成績書)にウイルス否定試験実施積済みの培養液で製造している旨を記載しています。

細胞の分化について

ご承知の通り、幹細胞は他の細胞に分化する能力のある細胞です。皮膚や筋肉、結合組織など様々な細胞に分化することができます。そのため培養中に他の細胞に分化してしまうことがあります。分化してしまった細胞の分泌物は、幹細胞の分泌物とは異なりますので、製造の各段階で幹細胞が幹細胞のままであることを確認しなければなりません。このような設備と技術を持った製造施設で製造されたヒト幹細胞培養液であれば、信頼して使用することが可能です。

成分の浸透と保護について

ヒト幹細胞培養液に含まれるタンパク質などは、皮膚への浸透* 力はありません。そのため弊社のヒト幹細胞培養液の多くはリポソーム加工されています。リポソームというのはリン脂質の二重膜構造のカプセルで、この加工をすることでヒト幹細胞培養液のタンパク質は皮膚へ浸透(※1)することができます。

また、ヒト幹細胞培養液のタンパク質は容器の内壁に付着してしまい損失しますが、リポソームは、タンパク質が容器に付着することを抑制します。

さらにリポソームはヒト幹細胞培養液のタンパク質が水溶液中では緩やかに分解してしまうこともある程度防いでいます。 ヒト幹細胞培養液を用いて化粧品を製造する場合、原料をリポソーム加工しタンパク質の損失と分解を防ぐことで、化粧品の品質を高めることができます。


* 角質層まで

エクソソームについて

エクソソームは様々な細胞が分泌する小胞です。幹細胞が分泌するエクソソームには美容に関連する情報が多く含まれていると考えられますが、培養の条件や細胞の状態などによって、その内容は大きく変化します。そのため、幹細胞のエクソソームだからといって、全てが同じ物ではありません。むしろ全てが違う物と言うこともできます。

弊社のエクソソームは様々な方法によって、含まれている情報を確認しています。同一培養条件で同一細胞を使用して分泌させたエクソソームなので、化粧品を製造する際にある程度の目安としてご使用いただけます。

また、弊社にはエクソソーム単独の原料はありません。エクソソームの活性を保ったまま単離することは、膨大な時間とコストがかかります。膨大な時間とコストをかけて、その他の成分、タンパク質などをあえて取り除く必要はないと考えているからです。

また、弊社はエクソソームの数についても公表していません。エクソソームの個数をナノトラッキングで示すこともできますが、この測定方法は水溶液中の粒子を測定する物で、エクソソームを正確に測定する方法ではありません。

学術的にはエクソソームという用語を用いるのは時期尚早で、EV(細胞外小胞)という用語を用いるというのが国際的な学会のコンセンサスとなる程度に、エクソソームの厳密な単離と測定というのは難しいことです。 そのため、弊社ではエクソソーム単独原料も個数のデータも開示していません。

◯ 原料の保管方法ついて

弊社の原料は冷蔵保存での提供を行っています。ヒト幹細胞培養液の化粧品原料では冷凍やフリーズドライ(FD)での提供も多く見受けられます。冷凍やFDの良いところは、防腐剤などがいらない点です。注射などに使用する際には、防腐剤など体に良くない物を添加する必要のない冷凍やFDは優れた保存方法です。

その一方でヒト幹細胞培養液を一度凍結させてしまうとタンパク質やエクソソームは一定量分解してしまいます。一説には一度の凍結でエクソソームは30%程度崩壊しているそうです。冷蔵でも成分の崩壊は起こりますが、適切な条件であれば活性の低下は緩やかです。

弊社のヒト幹細胞培養液は全て化粧品原料なので、化粧品製造の段階で防腐剤等の添加は不可避です。これらの事情を鑑みて、弊社原料は冷蔵保存で防腐補助剤を添加して供給を行っています。この方法が化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液に適した提供方法であると弊社は考えます。

こうした概念のもと弊社のヒト幹細胞培養液は製造され、化粧品原料としての提供を行っています。貴社化粧品へ信頼して配合していただける製品となっておりますので、ヒト幹細胞培養液やエクソソームを用いた化粧品の開発には、ぜひ弊社原料をご検討ください。

TOP