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プロローグ
アンチエイジング株式会社の創設者である野中秀訓が化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液に着目したのは2011年のことでした。主に製造業を対象にしたマーケティングコンサルの会社を起業し、過去に10年間滞在経験のある韓国で精力的に様々な企業との接点を模索する中で出会ったのが、現在、弊社の技術顧問を務める李ドンヒ博士でした。
当時、李ドンヒ博士は、企業スポンサーに乞われてアカデミアからビジネス(インダストリー)の世界に転身を決意し、大学教職員の職を捨て、企業附帯研究所として設立されたバイオマテリアル研究所の代表理事に就任した直後でした。この頃、化粧品業界には世界的なパラダイムの変化が起きていました。それまでのマーケティング主体の化粧品ではなく、満足度の高い化粧品、コスメシューティカルの台頭でした。
この背景には成分開発プラットフォームの変化が大きく関与しています。2003年に完了したヒトゲノム解読プロジェクトを発端にバイオの世界で沸き起こっている様々な技術革新がいよいよ社会実装され始めたことで、日常生活に大きな変化を及ぼし始めていたのです。そのひとつがタンパク質成分(ペプチド成分)の登場です。そんな時代背景の中で、李ドンヒ博士が注目した素材が「ヒト幹細胞培養液」だったのです。
アカデミア時代から研究していた素材で優れたタンパク質成分が豊富に含まれるヒト幹細胞培養液は、スキンケアの成分としては大きな可能性を秘めた素材だということが分かっていました。しかしながらインダストリー製品として商品化するにはハードルが多く、論文がゴールのアカデミアと、売れる商品を作り出さなければならないインダストリーの違いに対峙しながらも、様々な課題をクリアしつつ製品化技術を確立する研究のさなかの出逢いでした。この時の出逢いがアンチエイジング株式会社設立のきっかけになったのです。
アカデミアからインダストリーへ。~ 製品化の壁 ~
ヒト幹細胞培養液を製品化するには、解決しなければならない2つの問題がありました。1つ目は安定性の問題です。ヒト幹細胞培養液の構成成分の大部分はタンパク質成分ですが、タンパク質成分は変性しやすく、また、分子自体が大きいため皮膚(角質層)に浸透しにくいという問題があります。化粧品はその剤型(テクスチャ)によって様々な成分が配合されるので、それらの成分と交わることによって起きるタンパク質の構造的変化は、その活性を失わせる決定的な原因になります。
2つ目は試験管の中での実験で優れた機能性を発揮しても、化粧品として製品化した時にその活性が失われては何の意味もありません。肌に塗るだけで満足を得られるのか?これも大きな問題です。使用感を醸成するテクスチャ成分とは異なり、ヒト幹細胞培養液の有用性はその殆どが肌そのものに働きかけることにより得られる現象であるため、目的箇所まで到達しなければなりません。
これらの問題を解決するために2年を費やして開発したのが「ヒト幹細胞培養液専用リポソーム」です。一般的なリポソームとは異なり両親媒性のリン脂質で出来たカプセルの内膜に低分子コラーゲンの膜を生成することで、内包するヒト幹細胞培養液の長期安定性を確保するとともに、皮膚(角質層)への浸透性も解決しました。また、これと並行してリポソーム化したヒト幹細胞培養液の特性を最大限に生かすための処方(各種成分配合)の研究を進め、製品化技術を確立しました。
製品化技術の確立。~ ヒト幹細胞培養液のローンチ ~
日本における「ヒト幹細胞培養液」の歴史はアンチエイジング社の歴史ともいえます。アンチエイジング社の設立は2012年ですが、リサーチ開始は前述2011年の出逢いで、当時KFDAが施行したヒト幹細胞培養液の化粧品利用のためのガイドラインに準拠すべく奔走していた頃にまで遡ります。製品化を進めるのと並行して、私達は、各種安全項目の検証と製造過程で事故が起きない手順(SOP)の確立、さらにトレーサビリティの確立、そして、ヒト幹細胞培養液の機能性の検証を進めました。
日本においてヒト幹細胞培養液は薬機法に定義される生物由来原料に該当します。そのため、一般の化粧品原料とは異なり、生物由来原料基準という法律が適用されます。私達は、韓国のガイドラインと並行して日本の生物由来原料基準を遵守すべく、日韓共同でひとつひとつクリアする作業を進め、日本においては2012年に全ての準備が整い、アンチエイジング株式会社を設立するとともに、日本のヒト幹細胞培養液におけるパイオニアとして販売を開始しました。
原点回帰
会社設立以来、弊社はリポソームとともにビタミンC誘導体や機能性ペプチドを使ったミクスチャー原料とすることによって、ヒト幹細胞培養液を継続して利用していただける工夫を行ってきました。近年ではヒト幹細胞培養液について周知が進んだのでミクスチャー原料よりもヒト幹細胞培養液単体のリポソーム原料の方が引き合いが強くなっています。そんな中、弊社は節目を迎える今年度、新たな浸透型(角質層まで)ペプチドを用いたビタミンC誘導体「Pentide-C(ペンタイド-C)」を用いた複合原料「RS Liposome 3.0 Complex(RS リポソーム 3.0 コンプレックス)」を上市しました。ヒト幹細胞培養液については十分な認知が進んだ上で、より多くの人に実感していただくための原点回帰とも言える原料の提供を開始します。