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化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液が日本の化粧品業界に定着し、一つのカテゴリーを形成しつつあります。ヒト幹細胞培養液は、他の原料とは異なる由来や特徴を持つ化粧品原料です。ここではヒト幹細胞培養液という化粧品原料を理解していただくために必要な情報をお伝えしたいと思います。
ヒト幹細胞順化培養液という表示名称が示すもの
一般的に使われる「ヒト幹細胞培養液」という名称ですが、これは正式な成分名ではありません。化粧品に用いられる成分には全て正式名称があり、その正式名称のことを「表示名称」と言います。ヒト幹細胞培養液の場合、表示名称は「ヒト幹細胞順化培養液」というものになります。この表示名称以外にもヒト幹細胞培養液には「ヒトサイタイ血幹細胞順化培養液」や「ヒト骨髄幹細胞順化培養液」など多くの原料の表示名称が登録されています。正式に登録された表示名称は日本化粧品工業会などのHPで確認することができます。これらヒト幹細胞培養液の表示名称の定義の多くは「本品は、ヒト幹細胞を数日間培養した後、培養物から取り出した培養液である。(以下略)」というものになっています。実はこの表示名称の定義には大きな問題があります。通常表示名称の定義は、その成分が厳密にどのような物質か科学的に特定できるような内容になっています。例えばビタミンCの表示名称アスコルビン酸の定義は次のとおりです。「本品は、ビタミンCであり、次の化学式で表される。」というもので構造式が記載されています。この構造式の物質以外は、化粧品原料としてアスコルビン酸は名乗れないのです。一方で「本品は、ヒト幹細胞を数日間培養した後、培養物から取り出した培養液である。(以下略)」という条件では、物質の特定は全くできません。数日間というのは2日なのか1週間なのかによって、構成成分の濃度は大きく異なってきますし、培養条件によっては構成成分自体が大きく変わってしまいます。そのため、化粧品の裏のラベルに「アスコルビン酸」と記載があれば、その化粧品に間違いなくビタミンCは入っているのですが、同様に「ヒト幹細胞順化培養液」と記載があっても、どのようなヒト幹細胞培養液が入っているのかはわかりません。これがヒト幹細胞培養液という化粧品原料の問題点だと思います。
化学的な化粧品原料と生物学的な化粧品原料
こうしたことが起きてしまう理由の一つが、ヒト幹細胞培養液が生物学的な化粧品原料であるからです。例えばアスコルビン酸は化学式で示せるように化学的な単一物質です。多くの化粧品原料が化学的な単一物質です。一方でヒト幹細胞培養液は幹細胞が分泌するタンパク質や小胞によって構成される化粧品原料です。構成成分のうちのいくつかは、単独で化粧品原料として表示名称を持っているものがあります。それら全体をヒト幹細胞が分泌した比率のまま含んでいることが、ヒト幹細胞培養液の原料としての魅力です。化学や薬学的なアプローチだと様々な成分を含んでいるヒト幹細胞培養液の中の特定の成分に注目し、抽出と濃縮を行なって精製し限りなく単一の成分としていきますが、生物学的にはこれらは幹細胞が分泌する比率や組み合わせをそのままにすることが重要と考えます。こうした学問的なアプローチの違いを理解しないと、ヒト幹細胞培養液という化粧品原料を理解することは難しいです。
幹細胞の働きから考えるヒト幹細胞培養液
幹細胞が分泌する濃度や組み合わせが重要であることの意味は、幹細胞という細胞の特徴を考えれば理解できます。幹細胞は分化能と自己複製能を併せ持つ細胞です。分化能は他の組織の細胞に変わる能力のことで、自己複製能は幹細胞として増殖する能力です。ヒト幹細胞培養液に用いられる間葉系幹細胞は皮膚や筋肉、血管や神経、骨や結合組織の細胞に分化する能力を持っています。それらの組織の細胞に分化できることの意味は、間葉系幹細胞はそれらの組織のトラブルに対処している細胞であるということです。組織のトラブルに対して、幹細胞は自らが分化して組織の修復を図ることに加え、周辺の細胞にタンパク質や小胞を用いて情報伝達を行います。我々の体内で幹細胞はこのように働いています。ヒト幹細胞培養液が成分の抽出や濃縮を行わないのは、培養液中の成分バランスをできるだけ保持することを意識しているからです。
医療グレードという嘘
ヒト幹細胞培養液は他の化粧品原料とこうした点が大きく異なっているのですが、実は薬学や医学の世界も、同様の変化が起こっています。治療に使用される医薬品は、これまで長きにわたり、化学的な単一物質を主成分としてきました。そのような状況の中で、近年では抗体医薬品やペプチド医薬品など、生物学よりの医薬品技術が発展してきました。再生医療で注目されている、iPS細胞や幹細胞などは完全に生物学的な医療です。こうした技術の進歩に同調するような形で、化粧品原料としてヒト幹細胞培養液が化粧品に利用できる技術が発展してきました。ヒト幹細胞培養液が医療技術と歩みを共にして発展してきたことは事実ですが、再生医療と化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液とは、全く関係がありません。ヒト幹細胞培養液を配合した化粧品の広告表現で「医療グレードのヒト幹細胞培養液」や「再生医療で用いられるヒト幹細胞培養液」などを見かけることがありますが、これらは化粧品においては適切でない表現であるだけでなく全くの間違いです。世界中を見ても「医療グレード」のヒト幹細胞培養液はありませんし、少なくとも現在の日本の再生医療でヒト幹細胞培養液が用いられることはありません。
幅広い販路で流通しているヒト幹細胞培養液
このように多くの化粧品原料とは異なるヒト幹細胞培養液ですが、2012年に初めて日本に導入して以降、ヒト幹細胞培養液としての化粧品のトラブルはほとんどありません。それだけでなく、近年の注目度の高さは目覚ましく、化粧品の販路として考えられる、店販、訪販、通販、エステ用コスメ、クリニックコスメ、100均、ドラッグストア、デパコスなど、全ての販路でヒト幹細胞培養液を配合した化粧品を見つけることができるほどになりました。それだけの注目がヒト幹細胞培養液という化粧品原料に集まっているのです。正しい原料を用いて、正しい製造方法で製造すれば様々なカテゴリーの化粧品として活用できるのが、ヒト幹細胞培養液という化粧品原料です。